陶生ニュース
- No.71
- N0.70
- N0.69
- N0.68
- N0.67
- No.66
- No.65
頸動脈ステント留置術
1.脳卒中の病態について
脳卒中はがん、心臓病と並んで日本人の三大死因の一つです。脳卒中は脳出血と脳梗塞そしてくも膜下出血にわけられます。中でも脳使塞は60%以上をしめます。脳梗塞とは脳の血管が詰まって、その血管から栄養を受けていた脳が壊死する病気です。脳は様々な機能があり、侵された病変部により麻痺、言語障害、意識障害など様々な症状を呈します。
古典的には日本人は塩分の過剰摂取状態にあり、高血圧症がとても多く、脳出血が他国と比して異常に多かったことが報告されています。塩分摂取が減ってきた近代では、脳出血が減り、脳梗塞の割合が増えてきて今では脳出血よりも脳梗塞のほうが多くなっています。脳梗塞のタイプも変化してきています。昔は高血圧から脳の血管が細くなることで発生する脳梗塞が多かったのですが、現代では食生活の欧米化に伴い、頸動脈が細くなることから発生する脳梗塞が増えてきました。首のところで頸動脈が細くなると、ここで血の塊(血栓)が発生し、脳に飛んでいくことで脳梗塞が発生します。脳の血流が悪くなって発生するわけではなく、血栓が発生しては飛んでいくという状態になります。この頸動脈狭窄に対する治療法の一つが頸動脈ステント留置術になります。
2.頸動脈狭窄の治療法
標準治療としては全身麻酔で、直接頸動脈を切り開き、内部の動脈硬化巣を切り取ってくる『内膜剥離術』があります。古くからあり効果もしっかり評価されている方法です。しかし高齢・心不全などの合併により全身麻酔の負担が大きい方、片側頸動脈の閉塞、両側狭窄の方では内膜剥離術の危険が少し上がるため、内膜剥離術にかわってステント留置術の適応となります。明確な適応基準には含まれませんが、心臓のステント治療後など抗血小板薬(血液が固まりにくくする薬)をしっかり使う必要のある方では手術時にお薬を中断する必要がなくなるという利点もあります。
3.頸動脈ステント留置術
この治療法は「切らない脳梗塞予防治療」として注目を集めている方法です。2008年から日本国内でも正式に認可され、認可後は治療件数が爆発的に増えました。当院では筆者が担当しておりますが、正式認可前からも頸動脈ステント留置術に携わってきています。
治療法は単純です。足の付け根からカテーテルと呼ばれる管を入れ、頸動脈まで誘導します。細い部分を風船(バルーン)で広げ、ステントと呼ばれる金属の筒を留置し、血管壁を広げた状態を維持します。治療中に発生する動脈硬化部の破片・血栓などが脳に流れて行かないように、種々の脳保護機材のなかから適切なものを選択して使用します。脳保護の方法としては風船で血管を遮断しながら行う方法、フィルターで血流を温存しながら行う方法、血流を逆行させながらゴミをカテーテル側から吸引する方法などがあります。これらは一長一短があり、適宜選択いたします。術後は少し安静が必要になりますが、5―7日程度の入院で退院できます。
4.適応(対象となる患者さん)
最初から脳神経外科をかかられる必要はありません。かかりつけの医院でも頸動脈エコーができるところも多いですからまずは主治医にお問い合わせください。エコー検査は体に害がなく、首の頸動脈は体の表面から観察しやすい血管ですから、一番よくわかる検査といってよいでしょう。石灰化の強い方では頸部MRA(MR血管撮影)などで診断される場合もあります。これらの検査の結果、「頸動脈が細いJと診断された方が対象になります。詳しくは一度も脳梗塞や一過性脳虚血発作になっていない方で狭窄率80%以上、脳梗塞や一過性脳虚血発作になった方では狭窄率50%以上が対象となります。その上で、内膜剥離術のリスクが高い方を行うようにしています。
5.合併症
一番困る合併症が脳梗塞です。このままでは脳梗塞になってしまう危ない病変を治療するため、治療時に発生したゴミが脳に流れてしまうと脳梗塞の危険があります。上記適応の方であれば治療する利益のほうが上回るとされておりますので、一般には治療をしたほうがよいと考えられます。また治療時に飛ぶゴミのサイズは比較的小さいことが多いので通常は症状がでることは少ないと考えられています。
また脳出血の危険もあります。血栓症の予防に抗血小板薬を2剤以上内服していただいた状態で治療を行います。とても血管が細くなっている方(高度狭窄)に治療しますと、脳の血管が対処できないくらい脳血流が増えてしまうことがあります。とても稀に脳出血を起こすことがあります。また足の付け根の穿刺部におこるトラブル、薬剤アレルギーなど稀なものまで含めれば様々な合併症が起こりえますが、当院での2009年4月からの症例では30日以内の神経症状5.7%、永久合併症0%と良好な成績が得られており、治療後2年以内での脳梗塞の新規発症を予防できております。適応があれば自信を持っておすすめする治療であります。
6.最後に
脳梗塞はある日突然やってきて、今までの生活が送れなくなってしまう可能性のあるとても恐ろしい病気です。なってからでは遅いですから、合併症はありますが、当院でのリスクは5.7%であり一過性の症状ですんでいます。治療を受けていただくとその後の人生がより安心になると考えています。少しでもお役に立てますよう日々精進してまいります。
No.71 2012.1.1発行 編集:教育・広報活動委員会
爪水虫について
爪水虫(爪白癬)とは白癬菌というカビが爪に入りこんで、爪が白や黄色に濁ったり、分厚くなったり爪の中に白い筋ができたりする病気です。足の爪に発症することが多く、足の水虫を放置した結果起こってくる場合が大半です。爪水虫の人数は日本では10人にl人近く、約1200万人と推定されています。
爪水虫の症状と似た他の爪の病気もありますので、見た目だけでは診断ができません。診断するには、病変部の爪を少量削り取り、顕微鏡で自癬菌がいるのを確認する必要があります。
白癖菌はカビの一種で皮膚を覆っている角層や爪、髪の毛などに住みついて感染症を引き起こします。他のカビと同様に高温多湿な環境を好み、一般に気温20~40度、湿度60%以上の環境を好みます。
爪水虫自体は自覚症状はほとんどありませんが、放っておくと、爪が厚くなる、色が濁る、変形するといった症状が着実に進行します。やがて靴が履きづらくなったり、歩きにくくなったり、厚くなった爪に押されて指が痛くなります。また、治療されていない爪水虫の爪はいわば白癬菌の貯蔵庫のような役割を果たしており、常にまわりに菌をばらまいています。その結果、自分の足の水虫も完治しませんし、体の他の部位や、周りの家族、友人にもうつしてしまう可能性がありますので、きちんと治療することをおすすめします。
治療についてですが、普通の足水虫であれば、塗り薬を根気よく塗り続ければ、治っていきますが、爪水虫となると塗り薬だけでは爪の奥まで浸透せず、治すのは非常に困難で、飲み薬が効果的です。また、飲み薬の場合、体の内側から治すので足水虫にかかっていた場合にはこれも治すことができますので、一石二鳥の効果が期待できます。塗り薬のように、塗り残しの問題が生ずるといったことがないのも飲み薬のメリットです。
飲み薬ですが、現在は主に2種類の飲み薬が使われています。1種類の薬は1日1錠を毎日服用する薬で、爪が生え変るまで半年~1年内服が必要です。もう1種類の薬は飲み方が少し変わっています。パルス療法と言って、1週間薬をまとめて飲んで、3週間お休みするという飲み方で、それを3回繰り返します。その後は服用しなくても、しばらくの間爪の中に薬が貯留するので、次第にきれいな爪に生え替わっていきます。
どちらの飲み薬でも爪水虫は爪が生え変わるまで治りません。個人差はありますが、一般的には1ヵ月ごとに手の爪で約3ミリ、足の親指の爪で約1.5ミリ伸びると言われ、完全に生え変わるには、それぞれ6ヵ月、1年以上の期聞が必要です。どちらの飲み薬も有効率は約80%くらいといわれており、爪がなかなか伸びないと治癒が困難な場合もあります。
また、どちらの薬も肝機能等をチェックするため、時々血液検査が必要となります。ある種の薬とは併用できない場合があるので、服用中の薬のチェックが必要です。
このように飲み薬が開発されたことで、爪水虫は治りにくい病気から、完全に治る病気へと様変わりしました。近年テレビのCMや新聞・雑誌などで爪水虫について目にすることが多く、気になっていらっしゃる方も多いかと思いますが、まずはきちんと診断することが大切ですので、一度皮膚科を受診されることをおすすめします。
No.70 2011.10.1発行 編集:教育・広報活動委員会
食中毒に気をつけましょう
食中毒という言葉を開いたことがない人はほとんどいないでしょう。特に最近ユッケによるO-111集団感染や焼き肉店での0-157集団食中毒・ドイツでのO-104などの事例が報じられ、食中毒の怖さを感じている方も多いと思います。
食中毒とは、有害・有毒な微生物や化学物質・毒素などを含む飲食物を口から摂取した結果として起こる下痢や嘔吐・腹痛・発熱などの疾病の総称です。食中毒は1年中起こりえますが、好発時期は高温多湿となる梅雨や夏季で、そのほとんどが細菌性食中毒です。その他の季節では、冬期のノロウイルスによる牡蠣(かき)のウイルス性食中毒や秋から冬にかけてのキノコやフグなどによる自然毒食中毒などがあります。潜伏期間は原因菌によりさまざまですが、カンピ口バクターなど長いものでは1週間以上のものもあります。食中毒は通常、人から人へ直接うつることはありませんが、O-157などの腸管出血性大腸菌やノ口ウイルスは患者の便や吐物から感染することがあるため、患者の糞便などの処置には注意が必要です。治療は脱水対策など対症療法が基本で、止痢剤は腸管の蠕動(ぜんどう)を抑制し細菌の排泄を抑制してしまうため原則使いません。
食中毒は腐ったものや古いものを食べたときにだけおこるものではなく、新鮮なものでもその危険性はあります。多くの細菌では菌が増殖し、食中毒を発症しうる状態となっていても味や臭いを変えません。おいしそうに見えても恐ろしい菌が付着している可能性があり、飲食の直前に安全を磯認するのは困難です。そのため予防が最も重要となります。予防の三原則は、原因となる菌を付けない(清潔)・増やさない(迅速・冷却・乾繰)・やっつける(加熱)です。
以下に家庭での注意点を述べます。
付けない:一般に生の魚介類や肉類には食中毒の原因となる菌が多く付着しています。食材自身を加熱して食べることで、多くの食中毒は防止できますが、盲点となるのは食材を調理した器具や手に付着している菌です。調理器具の洗浄が不十分な場合、器具上で菌が増殖し、次に加工した食材に付着してしまうことがあります。特にまな板は、魚介類・肉用とその他の食材用で分けることをお勧めします。まな板を分けることが困難であれば、サラダなどの生食の食材の加工を先に行ない、肉類は最後に切るように心がけることで菌の付着の予防が可能です。また手指の洗浄も重要で、生食用の食材をさわる前には石鹸で手を洗い、清潔にする必要があります。
増やさない:食材を冷蔵・冷凍することは、原因菌の増殖を抑えるのに非常に有効で、一般的に10度以下で菌の増殖は鈍り、-15度以下で増殖が停止すると言われています。しかしいずれも菌が死滅するわけではなく、一度冷凍した食材でも解凍すれば菌の増殖は再開します。冷凍していた食材も常温で自然解凍を行えばその問に菌は増殖する可能性があり、冷蔵庫内で解凍したり、電子レンジで急速に解凍するなど、菌の増植を最小限にする必要があります。また塩分・酸(酢など)・アルコールなどにもある程度菌の増殖を抑える効果があります。しかし一般的に高濃度でなければ菌の増殖防止や滅菌(殺菌)効果は期待できず、食中毒の予防には適しません。一方細菌の増殖には水が必要なため、乾燥は菌の増殖予防になります。調理器具は清潔に洗浄し乾燥しておく必要があり、ふきんは常時湿らせておくのではなく、乾いたものを使用時に濡らして使用するとよいでしょう。
やっつける:細菌を不活化・死滅させるのに最も効果が高いのは加熱で、食中毒の原因菌の大部分は75度以上の環境で1分以上経つとほとんど不活化・死滅します。しかし中心まで十分に加熱しなければ細菌は残存し、加熱後長時間放置すれば生き残った少数の菌が増殖してしまいます。これを防ぐためには、食材の切り方の工夫や低火力で長時間加熱、電子レンジによる予備加熱を行ってからフライパンなどで焼くなどの工夫が必要です。ただし加熱して不活化・死滅するのはあくまで細菌であり、腐敗により生成されるアミン類や芽胞および毒素には分解できないものもあります。つまり細菌が既に毒素を作り出していれば加熱しても食中毒の防止ができないものもあるのです。
再度述べますが、食中毒には予防の三原則「付けない・増やさない・やっつける」が最も重要です。特に乳幼児や高齢者には、生肉は食べさせず、十分に加熱したものを食べさせてください。大人でも、生肉を食べる入はリスクを理解したうえで、食中毒かなと思ったたら、すみやかに陶生病院にかかってください。
最後に下痢は食中毒以外でも起こります。下痢の原因が食べ過ずや飲み過ぎ、脂っこい食事をとったなど思い当たることがある場合は、適度な水分をとり安静にして1~2日様子をみてください。それでも改善しない場合は近医への受診をお勧めします。下痢のほかに嘔吐や発熱・激しい腹痛・血便などを伴うときは、重症の食中毒のケースも考えられますので当院を受診してください。また長期間下痢が続いたり、便に血や粘液が混じったり、便の色が赤や黒・白っぽいなど普段と違う場合は、他の内臓疾患の可能性もあるので、当院を受診し精密検査を受けていただくとよいと思います。
No.69 2011.7.1発行 編集:教育・広報活動委員会
子宮頸癌ワクチンについて
みなさんは子宮頸癌ワクチンを知っていますか?子宮頚癌ワクチンは、子宮頸癌を予防するワクチンのことです。
子宮頸癌は、子宮頸部という子宮の入り口に発生する癌で、日本では年間15000入の患者が新たに発生し、約3500人の方が死亡しています。特に20~30代の患者が増加しており、発がん性のヒトパピローマウィルス(HPV) の持続感染により発生すると言われています。発がん性HPVは感染しでも自然に排除されることが多いのですが、感染が持続すると一部が癌に進行すると考えられています。また、自然に排除されても何度も感染を繰り返します。発がん性HPVには約15種類のタイプがありますが、その中でも16型・18型が多いとされています。この16型・18型のウィルスの感染を防ぐのが、子宮頚癌ワクチンなのです。
HPVの惑染経路としては主に性交渉によります。15~19歳の32%がすでに発がん牲HPVに感染しているとの報告があり、その一部が癌へ進行しているのです。子宮頸癌ワクチンは感染を予防するためのものであって、感染した状態から癌へ進作するのを防いだり癌化した病変を治すためのものではありませんので、発がん性HPVに感染する前の10代前半に子宮頸癌ワクチンを接種することで子宮頸癌の発症を効果的に予防できるとされています。また、感染後排除されても何度も感染を繰り返す性質も持っているため、次の感染予防という目的において、成人女性でも接種意義は十分にあると考えられています。
子官頸癌ワクチンは3回打つことが推奨されています。初回接種から、1か月後、6か月後の予定となっています。3回接種することで非常に高い抗体価が得られ、20年間子宮頸癌を予防できると推測されます。現に、日本やヨ一口ッパで行われた臨床試験では、子宮頸癌ワクチンを接種した後、2年~4年間の問、HPV16型・18型の感染を92.3~100%予防できたとの結果が出ています。
ワクチン接種後は、いくつか副皮応が見られます。発赤・腫脹・硬結は自然に改善するため、放置しても構いません。重篤な副反応としてはアナフィラキシーショック〈じんましん・呼吸困難・意識障害など〉が挙げられますが、これは接種後30分以内に起こることが多いため、30分は経過観察をさせていただいています。
魅力的な子宮頸癌ワクチンですがワクチンを接種すると子宮頸癌に100%ならないかといわれると、決してそうではありません。HPV16型・18型以外の発がん性HPVに感染したり、HPVによらない子宮頸癌が存在するからです。ワクチン接種後も定期的な子宮頸癌検診が必要です。ワクチンで感染予防、さらに予防しきれなかった病変を検診で早期発見することにより、子宮頸癌からあなたの体をより確実に守りましょう!!
No.68 2011.4.1発行 編集:教育・広報活動委員会
がん骨転移の疼痛緩和に新しい治療法~放射性薬剤ストロンチウム89~
はじめに
当院ではストロンチウム89(商品名:メタストロン注、以下89Srと略記します)によるがん骨転移疹痛緩和治療を2010年6月より開始しました。がんが骨に転移が起こると、そこでがん細胞が増えて周りの神経に触れたり、がん細胞が刺激性の物質を出したりして痛みが現れたりします。よく見られるのは骨盤や脊椎への転移で、座れない、歩けない、眠れないなどの症状に悩まされ、気分の落ち込みゃ食欲の減退を招くこともあります。
治療に使う薬剤には放射性の『ストロンチウム89」が含まれ、患部に集まった薬剤より放出されるベータ線という放射線が、がん細胞の活動を抑え、刺激性の物質も減らし痛みを抑えると考えられています。
89Srはカルシウムとよく似た物質のお薬で、がんが転移した骨ではカルシウムの吸収が活発なため89Srもカルシウムと同じように骨に多く集まり長くとどまる性質を持っています。
効果と効能
対象は固形癌(特に前立腺癌、乳癌、肺癌)の骨転移です。骨転移が多くあちこちが痛み、モルヒネなどの鎮痛剤、抗がん剤や体の外から放射線を当てる治療で痛みが抑えられないことなどが治療適用の基準になります。普段カルシウム剤を使っている患者さまには、89Srの骨への集積を邪魔されないよう、注射前2週間はカルシウム剤の使用を控えていただきます。
89Srは骨転移病巣に集まるとベータ線という放射線を放出し骨の痛みを和らげます。患部でのベータ線の影響範囲は平均2.4㎜(最大8㎜)の範囲しかおよぼしません。治療効果は通常は注射後1~2週間で痛みが和らぎ始めますが、4週間ほどかかる場合もあります。薬剤の効果は約3~6カ月ぐらい持続します(投与数日後に一時的に痛みが強くなることもあり、この間に痛み止めを増量することもある)。再投与も前回から3カ月あければ可能で、鎮痛剤(NSAID、オピオイド) やホルモン治療あるいはピスホスホネート系薬剤とも
併用できます。有効率は患者さまの約70%の方で疹痛が緩和されたと言われています。
治療の適応
本治療を行うには一定の基準を満たすことが必要となります。
治療方法
治療は通常日帰りで、体重に応じた薬剤量を静脈より注射するだけの簡単な方法です。
副作用
主な副作用は、血液を造る働きが低下する「骨髄抑制」です。血液中の白血球、血小板が20~30%程度、重い場合はそれ以上減少する恐れもあるため、実施前に採血し、血液の機能が一定以上確保されているかを確かめます。治療後も定期的に検査を行います。
骨髄抑制は、抗がん剤や体外からの放射線治療でも起きることがあるため、これらとの併用には十分注意が必要です。がん自体に対する治療ができなくなる場合もあります。
余命が非常に短い患者さまや、白血病や骨髄腫、悪性リンパ腫などの患者さまは対象外となります。注射後は2日~1週間で、骨に集まらなかった89Srのほとんどが尿から排泄されます。それまでは尿や血液中に薬剤が残るため、家族や介護者は患者さまの衣類やシーツ類などの取り扱いに注意が必要になります。
治療の費用
治療は保険が適用され、患者さまの実費負担は約10万円ぐらいになります。
89Srにより、つらい骨転移の痛みから患者さまが解放される可能性は高いと考えられています。保険適用もあり、今後さらに普及していくことも予想されます。 89Srは患者さま本人や家族の協力が必要な治療法であること、抗がん剤治療や放射線治療との併用には注意が必要なこと、血液のがんや終末期には用いることができないことなど、使用には慎重さも求められます。しかし、がん骨転移の痛みを緩和する方法の選択肢として早期に89Srを行うことが、患者さまのQOLの向上の切り札として期待が高まると思われます。
ストロンチウムによる治療のお問い合わせ先
放射線科アイソ卜ープ検査室
TEL 0561-82-5101(内線 3132)
中央放射線部第二放射線室長 伊藤修逸
No.67 2011.1.1発行 編集:教育・広報活動委員会
うつ病治療の現状とメンタルクリニックでの取り組み
気分が落ち込んだりすることは、日常の生活の中で誰もが経験していることです。心配事を抱えていたり、こころに負担になるような出来事が起きたりすると、誰でも気分は沈みます。そんな時、気分転換に友達と一緒に食事やカラオケに出掛ける人もいますし、スポーツで身体を動かして発散させる人もいます。しかし、こうした一時的な気分の変調だけで済んでいかない場合には、専門家に相談した方が良いと思います。
うつ病では、「落ち込み」といった気分の変調だけでなく、行動面や体調、物事の捉え方など、こころと身体の全体に不調が同時に起きてきます。憂うつな気分が一日中続くようになります。行動が鈍くなり、考えがまとまりにくくなります。食欲がなくなり、不眠や
頭痛が現れてきます。何事につけてもむやみに自分を責めるようになったり、消えてしまいたいと思い詰めるようになったりもします。
うつ病の発症には、ストレスやその人の素因など複数の要因が影響を及ぼすとされていますが、最終的には脳の機能不全が起こってきます。そのため、こころだけでなく身体にも不調があらわれてきます。周囲から相手のこころの中の変化まで気づくことはなかなか難しいですが、「最近、夜眠れないことが続いているみたい」など、周囲が体調の変化に気づいた時に精神科の受診を勧めることが、重症にならずにうつ病から回復するためにはとても大切なことです。長く続く不眠は辛いものです。精神科の受診は敷居が高いと感じている方でも、「ゆっくり眠れるように相談してみたら」と周囲から勧められて、うつ病の治療の糸口をつかんでいかれることが少なくありません。
脳が機能不全を起しているうつ病の治療ではセロトニン系やノルアドレナリン系など特定の神経系の活動を補強する「抗うつ薬」と呼ばれる薬を使い、神経系全体のバランスをとり脳が機能不全から回復するのを助けます。以前の抗うつ薬は口渇や便秘などの副作用が出やすい薬が多く、副作用のため必要な場合でも十分な量の薬を使うことが出来ないこともしばしばでした。現在ではこうした副作用がほとんどない抗うつ薬が開発され、効果が十分得られるまで薬の量を増やすことが推奨されています。こうした状況を背景に、抗うつ薬が原因で新たな問題が起きてきています。うつの症状はうつ病だけでなく、躁うつ病や統合失調症、認知症の初期でも見られることがあります。また、うつ病でも病気の成り立ちから、薬による治療よりもこころの発達に配慮した心理学的なアプローチが必要な場合が少なくありません。脳が機能不全を起しているうつ病以外の病気に安易に抗うつ薬を使うことでかえって神経系のバランスを更に崩す結果となり、薬を飲み始めてからかえって落ち着かなくなったり、興奮したり攻撃的になったりする場合さえあります。こうした危険は、治療の最初の段階で、表面上の症状だけでなく患者さんの素因や病気の成り立ちをしっかり見極め、適切に薬を使うことで防ぐことができます。このように安全な治療と速やかな回復を最優先に考えた場合、最初の段階でしっかりとした見立てを行い、適切な方向に向かつて治療の第一歩を踏み出せるようにすることが非常に重要だと考えます。
当科では、最初から専門の医師が患者さんのお話を直接うかがうことで、病気の全体的・多角的把握に努めております。綿密な診察と正確な診断のために1時間以上診察時間が必要となる場合もあるため、再来診察枠とは別に、初診専門枠を設けて診療にあたっております。随時初診予約を受け付けておりますが、問い合わせの増加のため、即日の対応ができずに診察日まで何日もお待たせしてしまうことが増えております。このような事情のため、診察予約の変更・取り消しをされる場合に早めにご連絡を頂けると、その分だけ他のお困りの方へ速やかに医療を提供できるようになりますので、ご配慮とご協力お願い致します。
No.66 2010.10.1発行 編集:教育・広報活動委員会
看護師による豆知識講座~外来診察待ち時間有効活用のために~
昨年行った待ち時間調査における当院の待ち時間の平均は、予約時聞から約30分から1時間でした。しかし、それ以上の待ち時間に感じたり、実際に待ち時間が長かったりする患者様も少なくありません。症状の個人差による時間のずれなどがあり、どうしても予約時間通りに進まないことが現状です。そこで、待ち時間を有効活用し、「今日の待ち時間は短く感じたなあ」と思っていただけるために「看護師による豆知識講座Jを企画しました。以下に今年2月下旬より取り組んできたことや、これからの予定をご紹介いたします。
まず、日程については定期的に開催することが難しいため、独自のカレンダーを作成し不定期な予定表として作成してあります。時間は午前10時から11時の1時間程度で、場所は外来棟1階の待合いホールで行っております。月間予定表は、診療案内窓口に置いてありますのでご自由にお取り下さい。
次に、内容については、できるだけ参加される方が興味を引かれるようなテーマが望ましいこと、看護師ならではの指導内容であること、参加される方が気軽に質問できる時間を設けること、距離感が近い参加型の取り組みであることなどに心がけております。また、参加される方にテーマのご要望などを求めながら、講座内容を増やしております。
現在までに行った講座は「糖尿病」「禁煙」「メタボリック症候群」「高齢者の物忘れ」「動脈硬化」「応急手当AEDの使い方」「突然の頭痛」「乳癌検診」「失敗しない点眼の方法」など多彩であり、それぞれ「これって何?」「予防するためには?」「こうなったらどうする?」を中心に構成しております。
講座を実施する看護師は、慣れない講座であるため、多くの時間を費やして準備し、参加者の前では緊張感を味わいながらすすめています。それでも参加される方が喜んでくださることが、どんな労いの言葉よりも嬉しく感じ、逆にやりがいとして参加者の方からエネルギーを頂いています。患者さまと職員がお互いに好結果をもたらせています。
また、最近の企画の中には、外部からの協力をいただき、瀬戸消防署救急隊員による「応急手当」、瀬戸警察署による「振り込め詐欺防止」講座を実施し、病院を超えた連携を行うようにもなりました。これはいかにも地域密着型の象徴であり、今までにない斬新なイベントではないでしょうか。
こうして、待ち時間短縮につながる工夫や対策も必要としながら別の角度から取り組み始めたこの企画が、参加される方にとって笑顔で満足いただけるように一生懸命努力していきたいと思います。また、今後は病院内の多職種の医療チームとも連携した内容へと発展し、持続性のある企画内容としていきたいと,思っております。
最後に、外来の待ち時間をちょっと拝借して・・・どうぞお気軽にお立ち寄り下さい。
No.65 2010.7.1発行 編集:教育・広報活動委員会