呼吸管理について
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呼吸管理(人工呼吸療法)について
呼吸不全
肺炎やCOPDの急性悪化などにより、自分自身の呼吸で正常な酸素の取り込みや炭酸ガスの排泄が維持できなくなった病態を呼吸不全と呼びます。また低酸素や高炭酸ガス血症が著しい場合は、酸素療法や人工呼吸療法などの呼吸管理が必要になります。通常急激な呼吸機能の低下によるものを急性呼吸不全とよび、1か月以上持続するものは慢性呼吸不全として区別します。
呼吸困難(感)
呼吸困難とは、呼吸数上昇や浅い呼吸、呼吸筋疲労、酸素や炭酸ガス交換の悪化など一般的な呼吸障害の症状を指します。一方呼吸困難感とは、自覚的な呼吸に関する苦痛感覚を指し、客観的な観察項目とは必ずしも比例しない場合があります。呼吸困難感は、呼吸機能障害だけでなく、心不全や精神的な要因(不安など)でも生じます。しかし原因が呼吸器に関わるものであれば、適切な呼吸管理は呼吸困難を解除し、呼吸困難感を緩和します。
呼吸管理法
呼吸不全の原因が取り除かれるまで、生命を維持し、呼吸困難を緩和する目的に呼吸管理を行ないます。呼吸管理には、(1) 酸素療法、(2) 人工呼吸療法、(3) 呼吸リハビリ療法などがありますが、ここでは主に人工呼吸療法について記します。
人工呼吸療法(急性呼吸不全に対して)
人工呼吸は、十分に機能できなくなった患者さまの呼吸を代償するものであり、根本的な治療ではありません。しかし今や人工呼吸療法は、呼吸不全の治療になくてはならないものであり、また技術の進歩により多くの機能を持った人工呼吸器も登場しています。そのため非常に専門的な知識が要求されるようになり、人工呼吸器のトラブルに関わる医療事故もあとを絶ちません。われわれは、高度の技術を取り入れると同時に安全面にも考慮した人工呼吸療法を行なえるよう、医師・看護師・理学療法士・臨床工学士などの専門職でチームを結成して治療に当たっています(呼吸サポートチーム)。
次頁に当科で行なっている人工呼吸療法の概略を示します。
当科で行っている人口呼吸療法
気管挿管
患者さまに人工呼吸療法を受けて頂くためには、細く柔らかいチューブ(図)を口から声帯を通して気管に入れ、人工呼吸器の回路と接続する必要があります。これを「気管挿管」と呼びます。このチューブが入った状態では声が出せないので、会話はできません。また咽喉の違和感を伴うため、軽い鎮静を必要とします。人工呼吸から離脱して、チューブを抜去すれば、また会話できるようになります。
間歇的陽圧換気 SIMV
(SIMV:synchronized intermittent mandatory ventilation)
最も一般的な人工呼吸法です。決められた量の空気を決められた回数だけ、気管チューブを介して肺に送り込み、呼吸を行います。肺は風船と同様、圧をかけて膨らんだり萎んだりすることになり、これを陽圧換気と呼びます。
非侵襲的人工換気 NPPV
(NPPV:noninvasive positive pressure ventilation)
気管挿管せず、人工呼吸を行なうために考案された新しい方法です。人工呼吸器から送られる空気を、顔に密着させた柔らかいマスクを介して呼吸します。人工呼吸中も会話や飲水が可能で、より快適です。この方法で改善しない重症の呼吸不全では、気管挿管・人工呼吸へ移行します。
世界的にもこの方法は広まりつつあり、COPDの急性悪化やうっ血性心不全の治療ではなくてはならないものになりつつあります。当科でも、これまで100例以上のCOPD急性悪化の患者さまに使用し、95%という高い治療成功率をあげています。
高頻度換気 HFOV
( HFOV:high frequency oscillatory ventilation)
最も重症の呼吸不全であるARDSの患者さまでは、通常の人工呼吸ではガス交換を維持することがもはや困難になる場合があります。これに対し、呼吸を止めて肺を休ませ、チューブを介して少量の空気を高頻度(5~10Hz)で振動させることで換気を維持するHFOVが有効な場合があります。この人工呼吸法はまだ一般的ではありませんが、最も肺に優しい方法として期待されており、新生児領域ではすでに十分な効果が上がっています。現在日本ではまだ数施設で行なわれているのみですが、当科ではこのHFOVをいち早く取り入れ、臨床応用しています。これまで最も重症の8人の患者さまに使用させて頂き、30日の生存率は50%と比較的良好な成績を得ています。今後もARDSの患者さまの予後を改善できるよう、この人工呼吸法の経験を重ねてゆく予定です。
呼吸管理のまとめ
呼吸は生命を維持するために必須の営みであり、一方呼吸困難感は非常に辛いものです。これらを改善するための呼吸管理は、患者さまの治療上非常に重要なものであり、質の高い安全な呼吸管理を行なってゆくことがわれわれ呼吸器アレルギー内科の責務と考えています。今後も最新の医療技術を取り入れながら、患者さま本位の医療を提供してゆきます。